フリーランスの買いたたきとは?エンジニアの単価で該当しやすい9つの例と対処法【2026年版】

この記事の結論
フリーランスの買いたたきは、十分な協議なく相場より著しく低い報酬を決めることです。1か月以上の業務委託で禁止され、令和7年度は250件の措置がありました。
- 契約時に低く決めるのが買いたたき、後から減らすのは減額
- 協議の有無や相場との差など4つの要素で総合的に判断される
- 自分の相場とスキルの根拠を示せると、協議を求めやすくなる
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フリーランスの買いたたきとは、同じような仕事に通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を、発注者が不当に決めることです。2024年11月に施行されたフリーランス新法で、1か月以上の業務委託における禁止行為の一つとされています。
公正取引委員会が公表した令和7年度の運用状況では、買いたたきを理由とする措置は250件で、違反類型全体の9.2%を占め、支払期日の違反と条件明示の違反に次ぐ3番目の多さでした。
ただし、単価が低いというだけで直ちに違法になるわけではありません。どのように単価が決まったのか、相場とどれだけ離れているのかなど、いくつかの要素を総合的に見て判断されます。
以下では、買いたたきの定義と判断の要素、エンジニアの単価の決め方で該当しやすい9つの例、そして疑わしいときの対処法を順に解説します。
こんな悩みはありませんか
- 提示された単価が相場より低い気がする
- 作業範囲が増えたのに単価が変わらない
- 「予算がないから」と一方的に単価を決められた
- 単価に納得できないが、どう話せばいいか分からない
この記事で分かること
- 買いたたきの定義と、減額との違い
- 買いたたきかどうかを判断する4つの要素
- エンジニアの単価で該当しやすい9つの例
- 自分の単価の根拠を示すための準備
- 買いたたきが疑われるときの対処法と相談先
この記事を読めば、提示された単価が問題のある決め方をされていないか、自分で確かめるための視点が分かります。単価について話し合うには、自分のスキルと実績を根拠として示せることが前提です。まずは無料でスキルログに登録し、これまでの経験を整理しておきましょう。
フリーランス新法では、買いたたきを「給付の内容と同種または類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること」と定義しています。
対象は1か月以上の業務委託
買いたたきの禁止は、発注者に課される7つの禁止行為の一つで、1か月以上の業務委託に適用されます。短い契約の更新を重ねて通算1か月以上になる場合も含まれます。エンジニアの準委任契約は月単位で続くものが多いため、ほとんどの案件が対象になると考えてよいでしょう。
買いたたきと減額の違い
似た禁止行為に「報酬の減額」があります。公正取引委員会と厚生労働省の運用基準では、買いたたきは業務を委託する時点で生じるもの、減額はいったん決まった報酬を後から減らすもの、と区別されています。
| 項目 | 買いたたき | 報酬の減額 |
|---|---|---|
| 起きるタイミング | 契約で報酬を決める時点 | 報酬が決まった後 |
| 典型的な例 | 相場より著しく低い単価を一方的に決める | 合意した単価から理由なく差し引く |
| エンジニア案件での例 | 予算だけを理由に低い月単価を提示される | 精算時に合意のない控除をされる |
フリーランスの買いたたきを判断する4つの要素
買いたたきかどうかは、協議の有無などの決定方法、差別的かどうか、相場との差、コストの動向の4つの要素を勘案して総合的に判断されます。
運用基準では、次の4つの要素を勘案して判断するとされています。
- 報酬の額を決めるときに、十分な協議が行われたかどうかなどの対価の決定方法
- 差別的であるかどうかなどの対価の決定内容
- 「通常支払われる対価」と、実際に支払われる対価との乖離の状況
- 業務に必要な原材料などの価格の動向
いちばん大きいのは協議の有無
エンジニアの案件で特に問題になりやすいのは、1つ目の決定方法です。こちらの見積もりや希望を聞かずに単価を決め、異議を伝えても話し合いに応じない場合は、買いたたきと判断される方向に働きます。逆に、双方が十分に話し合って合意した単価であれば、相場より低くても直ちに問題にはなりにくいといえます。
「通常支払われる対価」は相場で決まる
通常支払われる対価とは、同じような仕事に対して一般的に支払われている報酬のことです。エンジニアの場合は、職種、経験年数、担当する工程によって相場が大きく変わります。職種別・経験年数別の目安はフリーランスエンジニア単価相場|職種・経験年数別で見る市場価値【2026】で整理しています。
エンジニアの単価で該当しやすい9つの例
運用基準は、買いたたきに該当するおそれがある9つの例を挙げています。エンジニアの案件に置き換えると、見積もり後の作業増加や一律の単価引き下げが典型です。
運用基準が挙げる9つの例を、エンジニアの案件で起こりやすい場面に置き換えると次のとおりです。
| 運用基準の例 | エンジニアの案件で起こりやすい場面 |
|---|---|
| 大量・継続の発注を前提にした見積もり単価を、短期・少量の発注に使う | 長期参画を前提に安く見積もったのに、2か月で終わる案件に同じ単価を当てはめられる |
| 見積もり後に作業が増えたのに、報酬を見直さない | 要件追加で開発範囲が倍になったのに、当初の見積額のまま据え置かれる |
| 一律に一定の比率で単価を引き下げる | 「今期は全員10%下げます」と協議なく通告される |
| 発注者の予算単価だけを基準に、一方的に低く決める | 「予算が月50万円なので」と相場を考慮せずに単価を決められる |
| 短納期なのに、費用の増加を考慮しない | 休日対応が必要な短納期でも、通常と同じ単価にされる |
| 合理的な理由なく、特定の人だけ低くする | 同じ役割のメンバーの中で、自分だけ理由なく単価が低い |
| 特定の地域や顧客向けであることを理由に低くする | 同じ内容の開発でも、特定の顧客向けだからと相場より低くされる |
| 知的財産権の対価を協議せず、一方的に低く決める | ソースコードの著作権を譲渡する契約なのに、その対価について話し合いがない |
| コスト上昇分の反映について協議せず、報酬を据え置く | 物価や人件費が上がっても、単価の見直しについて一度も話し合いの場がない |
当てはまっても直ちに違法とは限らない
表の例は「該当するおそれがある」ものとして示されているもので、実際に違反かどうかは個別の事情を総合的に見て判断されます。自分の案件で当てはまるものがあれば、まずは発注者に協議を求めることから始めましょう。
フリーランスの買いたたきを防ぐ単価の根拠づくり
買いたたきを防ぐ最大の手段は、自分の相場とスキルの根拠を示して協議できる状態にしておくことです。根拠がなければ、低い単価にも反論できません。
自分の相場を把握しておく
提示された単価が相場と比べて低いのかどうかは、自分の相場を知らなければ判断できません。同じ職種・経験年数の単価の目安を調べ、自分の位置を把握しておきましょう。
スキルと実績を数字で示せるようにする
協議の場で説得力を持つのは、担当した工程、チームでの役割、改善した数値といった具体的な実績です。「設計から担当できる」「5人のチームをまとめた」と示せれば、相場の上限に近い単価を求める根拠になります。
スキルログでスキルと案件の実績を整理しておけば、単価の協議の前に、自分の強みを根拠として示せるスキルシートをすぐに用意できます。具体的な交渉の進め方はフリーランスエンジニア単価交渉術|スキルシートで月単価を上げる実践交渉術と成功事例で紹介しています。
買いたたきが疑われるときの対処法
まず単価の根拠を添えて文面で協議を求め、応じてもらえなければフリーランス・トラブル110番や公正取引委員会などの窓口に相談します。
文面で協議を求める
「作業範囲が増えたため、単価の見直しについてご相談させてください」のように、根拠を添えてメールで協議を求めましょう。協議を求めた記録と、それに対する発注者の対応は、相談するときの重要な材料になります。契約条件の確認ポイントは業務委託契約 エンジニア|フリーランスが確認すべき7つのポイントと注意点も参考にしてください。
相談窓口を利用する
協議に応じてもらえない場合は、厚生労働省の委託で運営されている「フリーランス・トラブル110番」で弁護士に無料で相談できます。違反が疑われる場合は、公正取引委員会や中小企業庁の窓口に申し出ることもできます。
申出を理由にした報復は禁止されている
行政の窓口に申し出たことを理由に、発注者が取引を減らしたり打ち切ったりすることも法律で禁止されています。不利益を恐れて泣き寝入りする必要はありません。
まとめ
フリーランスの買いたたきは、十分な協議なく相場より著しく低い単価を決めることです。自分の相場とスキルの根拠を持ち、文面で協議を求めることが一番の対策になります。
フリーランスの買いたたきは、フリーランス新法で1か月以上の業務委託において禁止されている行為で、協議の有無、差別性、相場との差、コストの動向という4つの要素で判断されます。見積もり後の作業増加や一律の単価引き下げなど、エンジニアの案件でも起こりやすい場面があります。
単価に納得できないときは、まず自分の相場と実績を根拠に協議を求めましょう。根拠を示せるよう、日頃からスキルと実績を整理しておくことが大切です。
よくある質問
買いたたきについて、エンジニアからよく寄せられる質問をまとめました。
相場より低い単価で合意したら、買いたたきになりますか?
十分な協議のうえで自分も納得して合意した単価であれば、相場より低いというだけで直ちに買いたたきとはいえません。協議がなく一方的に決められたかどうかが、大きな判断要素になります。
エージェントのマージンが高いのは買いたたきですか?
マージンの割合そのものを直接規制するルールではありません。ただし、エージェントがエンジニアと直接契約している発注者である場合、エンジニアに支払う単価の決め方が4つの要素に照らして不当であれば、買いたたきの問題になり得ます。
契約更新のときに単価を下げると言われたら、どうすればいいですか?
下げる理由と根拠を文面で確認しましょう。業務内容が変わらないのに一律に引き下げる場合や、協議に応じない場合は、買いたたきにあたるおそれがあります。自分の実績を示して、据え置きや見直しを求めることができます。
単価アップを求めて断られたら、買いたたきになりますか?
単価アップを断られただけでは、直ちに買いたたきにはなりません。ただし、コスト上昇分の反映について協議の場を設けずに据え置くことは、運用基準で該当するおそれがある例に挙げられています。
副業の案件でも買いたたきの禁止は適用されますか?
従業員を使わずに個人として業務委託を受けていれば、副業でも対象になり得ます。1か月以上の業務委託であることが条件なので、契約期間も確認しましょう。
ここまでの内容を踏まえて、まずは自分の相場を確認し、単価の根拠になるスキルと実績を整理してみましょう。


