フリーランス新法とは?エンジニアが確認すべき7つの義務と契約チェックリスト【2026年版】

フリーランス新法の概要を図解。対象となる個人事業主や一人社長のエンジニア、発注者に課される7つの義務、令和7年度の情報通信業の措置割合37.0%を紹介

この記事の結論

フリーランス新法は2024年11月に施行された法律で、発注者に条件の明示や受領から60日以内の支払いなどを義務づけ、個人で働くエンジニアの取引を守ります。

  • 従業員を雇わない個人や一人社長のエンジニアが対象になる
  • 発注者には条件明示や60日以内の支払いなど7つの義務がある
  • 令和7年度の措置件数は情報通信業が37.0%で業種別の最多

📖 読了時間:約15分

フリーランス新法は、従業員を雇わずに個人で仕事を受けるエンジニアを守るために、2024年11月1日に施行された法律です。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、発注する企業に取引条件の明示や報酬の支払期日の設定など、7つの義務を課しています。

施行から約2年がたち、運用の実態も見えてきました。公正取引委員会が2026年6月に公表した令和7年度の運用状況では、勧告が10件、指導が1,542件にのぼり、業種別では情報通信業が575件(37.0%)と最も多くなっています。つまり、IT業界は法律違反が最も多く見つかっている業界の一つです。

以下では、法律の対象になるエンジニアの条件、発注者の7つの義務、最新の運用状況、契約前に確認したいポイント、困ったときの相談先を順に解説します。

こんな悩みはありませんか

  • 業務委託で働いているが、自分が法律の対象か分からない
  • 契約書をもらわないまま案件に参画している
  • 支払いまでの期間が長く、資金繰りが不安になる
  • 一方的な減額や急な契約終了にどう対応すればいいか知りたい

この記事で分かること

  • 対象になるエンジニアの条件と、エージェント経由の場合の考え方
  • 発注者に課される7つの義務と、それぞれの適用条件
  • 公正取引委員会が公表した令和7年度の運用状況
  • 契約前に確認したい5つのチェックポイント
  • トラブルが起きたときの相談先と対処の流れ

この記事を読めば、自分の契約がどこまで法律で守られているのか、契約前に何を確認すべきかが具体的に分かります。条件の確認や単価の交渉では、自分の経歴を整理しておくことが土台になります。まずは無料でスキルログに登録し、これまでの案件の経験を一か所にまとめておきましょう。

目次

フリーランス新法とは?エンジニアに関係する基本

フリーランス新法は、従業員を使わずに業務委託で働く個人や一人社長を「特定受託事業者」として保護し、発注者に取引の適正化と就業環境の整備を求める法律です。

取引に関するルールは公正取引委員会と中小企業庁が、ハラスメント対策などの就業環境に関するルールは厚生労働省が担当しています。

対象になるエンジニアの条件

対象になるのは、業務委託を受ける事業者のうち、従業員を使用していない人です。具体的には、従業員を雇っていない個人事業主と、代表者が1人だけで、ほかに役員も従業員もいない法人(いわゆる一人社長)が該当します。

ここでいう「従業員を使用する」とは、週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる人を雇うことを指します。家族だけで事業をしている場合は、従業員を使用していない扱いになります。会社員が副業で業務委託の案件を受ける場合も、条件を満たせば対象になり得ます。

発注者の種類によって義務の範囲が変わる

発注する側の義務は、その発注者が従業員を使っているかどうかで変わります。従業員を雇っている企業や、役員が2人以上いる法人は、7つの義務すべてを負います。一方、従業員を使わない個人の発注者は、取引条件の明示だけが義務です。エンジニアが受ける案件の多くは、7つの義務すべての対象と考えてよいでしょう。

エージェント経由・SESの商流での考え方

義務を負うのは、エンジニアと直接、業務委託契約を結んでいる相手です。エージェントを経由して参画している場合は、多くの場合そのエージェント会社が契約の相手、つまり発注者にあたります。商流の上にいる元請けやエンド企業ではなく、まず自分が契約書を交わしている会社を確認しましょう。

また、契約の名称が「準委任」でも「請負」でも、業務委託であれば対象になります。契約形態ごとの責任の違いはフリーランスエンジニアの契約形態|準委任・請負の違いと注意点で詳しく解説しています。

フリーランス新法で発注者に課される7つの義務

発注者の義務は7つあり、取引条件の明示と60日以内の支払いはすべての契約に、禁止行為は1か月以上の契約に、中途解除の予告は6か月以上の契約に適用されます。

7つの義務と適用条件を一覧にすると、次のとおりです。

義務 主な内容 適用される契約
取引条件の明示 報酬額や支払期日など9項目を、書面やメールで直ちに示す すべての業務委託
報酬の支払期日 受領日から60日以内のできる限り短い期間で期日を定めて支払う すべての業務委託
禁止行為 受領拒否・減額・買いたたきなど7つの行為を禁止 1か月以上の業務委託
募集情報の的確表示 求人や案件募集で虚偽や誤解を生む表示をしない 広告などで募集する場合
育児介護との両立への配慮 申出に応じて、育児・介護と業務の両立に必要な配慮をする 6か月以上の業務委託
ハラスメント対策 相談窓口の設置など、ハラスメント防止の体制を整える すべての業務委託
中途解除の予告 解除や更新しない場合は30日前までに予告し、求めがあれば理由を示す 6か月以上の業務委託

取引条件の明示(9項目)

発注者は業務を委託したら直ちに、取引条件を書面またはメールやチャットなどの電磁的方法で示さなければなりません。明示する項目は次の9つです。

  • 業務の内容
  • 報酬の額
  • 支払期日
  • 発注者とフリーランスの名称
  • 業務を委託した日
  • 給付を受け取る日、または役務の提供を受ける日
  • 給付を受け取る場所、または役務の提供を受ける場所
  • 検査をする場合は、検査が完了する日
  • 現金以外で支払う場合は、その支払方法

報酬は受領から60日以内に支払う

報酬の支払期日は、成果物を受け取った日や役務の提供を受けた日から数えて60日以内の、できる限り短い期間内に定める必要があります。期日を定めなかった場合は、受領した日が支払期日とみなされます。

なお、発注者が元請けから受けた仕事を再委託している場合は、元の委託者の名称や支払期日を明示したうえで、元委託の支払期日から30日以内に支払期日を定めることも認められています。SESの商流で参画している人は、この例外が使われていないかも確認しておきましょう。

1か月以上の契約で禁止される7つの行為

1か月以上の業務委託では、発注者は次の7つの行為をしてはいけません。フリーランス側の責任がないのに成果物の受け取りを拒むこと、報酬を減らすこと、成果物を返品すること、相場より著しく低い報酬を一方的に決める「買いたたき」、指定した物やサービスの購入・利用の強制、金銭や労務などの不当な提供の要請、費用を負担せずに内容を変更させたりやり直させたりすることです。

6か月以上の契約は30日前までに解除を予告

6か月以上の業務委託を途中で解除する場合や、契約を更新しない場合、発注者は少なくとも30日前までに、書面やメールなどで予告しなければなりません。フリーランスが理由を求めたときは、遅滞なく開示する必要があります。ただし、災害などのやむを得ない事由がある場合や、フリーランス側の責任による場合など、予告が不要になる例外もあります。

数字で見るフリーランス新法の運用状況

公正取引委員会の発表では、令和7年度に勧告10件・指導1,542件が行われ、違反の9割超は支払い・条件明示・買いたたきの3類型でした。

公正取引委員会は2026年6月10日、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の運用状況を公表しました。

違反の9割超は「支払い」「条件明示」「買いたたき」

違反行為の類型別の件数は合計2,727件で、内訳は次のとおりです。

違反行為の類型 件数 割合
期日における報酬の支払義務違反 1,135件 41.6%
取引条件の明示義務違反 1,126件 41.3%
買いたたき 250件 9.2%

上位の2類型だけで8割を超えています。つまり、違反の多くは特殊なケースではなく、「条件を書面で示していない」「期日までに払っていない」という基本的なルールが守られていないものです。逆に言えば、エンジニア自身がこの2点を確認するだけで、多くのトラブルを未然に防げます。

IT業界は措置件数の4割近くを占める

業種別の措置件数では、情報通信業が575件(37.0%)で最も多く、学術研究、専門・技術サービス業が続きます。個人への業務委託が多く、条件をチャットで済ませる慣行が残っていることが背景と考えられます。

2026年に入ってからは、報酬の支払い遅れや条件の明示漏れを理由に、報道機関や電力会社などへの勧告も相次いで公表されています。大企業であっても、法律への対応が十分とは限らないということです。

エンジニアが契約前に確認したい5つのチェックポイント

法律の中身を知ったうえで、契約前に条件の書面化・支払期日・精算ルール・追加作業・契約終了の5点を確認すると、トラブルの大半を防げます。

業務委託契約で一般的に確認すべき項目は業務委託契約 エンジニア|フリーランスが確認すべき7つのポイントと注意点でまとめています。ここでは、この法律の観点から特に確認したいポイントに絞って紹介します。

1. 発注書や契約メールに9項目がそろっているか

参画が決まったら、報酬額、支払期日、業務内容などが記録に残る形で届いているかを確認しましょう。チャットで「来月からお願いします」と言われただけの状態は、明示義務を満たしていない可能性があります。足りない項目は、メールで送ってもらうよう依頼して構いません。

2. 支払サイトが60日を超えていないか

月ごとに稼働を締める契約では、締め日から支払日までの日数を確認します。たとえば「月末締め翌月末払い」であれば60日以内に収まりますが、「月末締め翌々月末払い」は60日を超えるため、再委託の例外にあたらない限り問題になる可能性があります。

3. 精算幅や減額のルールが事前に決まっているか

「月140〜180時間」のような精算幅を設ける契約では、下限を下回った場合の控除の計算方法が契約時に決まっているかを確認しましょう。事前の合意なく、あとから報酬を減らすことは禁止行為にあたります。

4. 追加作業や仕様変更の扱いが決まっているか

請負に近い案件では、仕様の追加ややり直しが発生したときに、追加の費用がどう扱われるかを事前に決めておきます。費用を負担せずに大幅なやり直しを求めることも、禁止行為の一つです。

5. 契約終了の連絡ルールを把握しているか

6か月以上続く契約では、更新しない場合も30日前までの予告が必要です。急に「今月で終了」と伝えられた場合は、例外にあたる事情があるかを確認しましょう。

条件の確認と同じくらい大切なのが、自分の市場価値を把握しておくことです。相場を知らなければ、買いたたきにあっていても気づけません。スキルログでスキルや案件の実績を整理しておけば、単価の根拠を示しながら交渉できます。交渉の進め方はフリーランスエンジニア単価交渉術|スキルシートで月単価を上げる実践交渉術と成功事例も参考にしてください。

トラブルが起きたときの相談先と対処の流れ

支払いの遅れや一方的な減額が起きたら、まず記録を残して発注者に確認し、解決しなければフリーランス・トラブル110番や行政の窓口に相談します。

まずは記録を残して発注者に確認する

契約書、発注メール、チャットのやり取り、稼働報告など、条件と実績が分かる資料を保存しておきます。そのうえで、支払期日や減額の理由をメールで問い合わせましょう。

フリーランス・トラブル110番や行政の窓口に相談する

当事者間で解決しない場合は、国の委託事業として運営されている「フリーランス・トラブル110番」で、弁護士に無料で相談できます。法律違反が疑われる場合は、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省(都道府県労働局)の窓口に申し出ることもできます。

申出を理由にした不利益な扱いも禁止されている

行政の窓口に申し出たことを理由に、発注者が取引を減らしたり打ち切ったりすることも、法律で禁止されています。違反した発注者には、指導や勧告、命令が行われ、命令に従わない場合は企業名の公表や50万円以下の罰金の対象になります。

まとめ

フリーランス新法の中身を知り、契約前に条件の書面化と支払期日を確認することが、個人で働くエンジニアにとって最も効果的な自衛策です。

フリーランス新法は、従業員を雇わずに働くエンジニアを守るための法律で、発注者には取引条件の明示、60日以内の支払い、禁止行為の回避、30日前の解除予告など7つの義務があります。令和7年度の運用状況を見ると、違反の多くは条件明示と支払いという基本的なルールに集中しており、IT業界は措置件数が最も多い業種でした。

法律があっても、自分で確認しなければ守られないことがあります。次の契約からは、9項目がそろった条件を記録に残る形で受け取り、支払サイトと精算ルールを確認する習慣をつけましょう。

よくある質問

フリーランス新法について、エンジニアからよく寄せられる質問をまとめました。

会社員が副業で業務委託を受ける場合も対象になりますか?

対象になり得ます。会社員であっても、個人として業務委託で仕事を受け、従業員を使っていなければ、その取引では保護の対象です。副業の案件でも、条件の明示や支払期日のルールは同じように適用されます。

準委任契約でも対象になりますか?

はい、対象になります。契約の名称が準委任でも請負でも、事業者からの業務委託であれば適用されます。ただし、実態として指揮命令を受けて働いている場合は、労働者として労働関係の法律で判断されることがあります。

契約書を交わしていないと違法になりますか?

紙の契約書がなくても、メールやチャットなどの電磁的方法で9項目が示されていれば明示義務は満たされます。一方、口頭だけで条件を伝え、記録に残る形で示していない場合は、義務違反にあたる可能性があります。

下請法との違いは何ですか?

下請法(2026年1月から取適法として改正施行)は、発注者と受注者の資本金や従業員数の規模によって対象が決まります。これに対しフリーランス新法は、受注者が従業員を使わない個人や一人社長であれば、発注者の資本金に関係なく適用される点が大きな違いです。

支払いが遅れたら、まず何をすればいいですか?

まず契約書やメールで支払期日を確認し、発注者に文面で支払い状況を問い合わせましょう。それでも支払われない場合は、フリーランス・トラブル110番で弁護士に相談するか、公正取引委員会などの窓口に申し出ることを検討します。

ここまでの内容を踏まえて、まずは今の契約条件を見直し、あわせてこれまでの案件の経験と単価を整理してみましょう。次の契約交渉で、自分の価値を根拠を持って伝えられるようになります。

スキルログ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です